ふたつの心   〜 こころは複雑系 〜


カウンセリングをしていると、時折
「ふたつの心」「ふたつの気持ち」ということが、
とても大切なテーマになってくる時が
あります。

ごく稀にですが、
初回から、そういったお話を
敢えて取り上げなくてはならないケースもあります。
 

わたしたちは
いろいろな気持ちや感情を、抱えながら生きています。

互いに矛盾する気持ち ・ 感情だって
同時に抱えながら生きていることは
ごく普通のことです。

むしろ、それが人間の自然な姿かもしれません。

互いに矛盾する気持ちというのは、たとえば
「 こうしてみたい 」「 あんなふうにやれたらいいな 」
と思っている心があると同時に、
「 そんなことはしたくない 」
「 あんなふうにはなりたくない 」
という心があったりします。


そのどちらかが本当の気持ちで、ではなく
どたらも、本当の気持ちなのかもしれません。

だとすると、そのどちらの気持ち ・ 心も
認めてあげられるようになってゆくことが、
大事な一歩、かもしれません。
 

  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

たとえば或る人が
他人とうまく接することができない、と
悩んでいたとします。

もっと人と近しく付き合えるようになりたい ・ ・ ・
そうした思いがあったとします。

でも、わたしたちの中には「 ふたつの心 」があって、
互いに葛藤している場合があります。

たとえば、人との関係であれば、
人と近しくなる、親しくなる、というのは
もちろん喜びも運んできてくれますが、
同時に煩わしさや我慢すること、
相手に合わせて譲らなくてはならないことだって
出てくるのが普通です。

そんな煩わしいこと、苦痛なことを
我慢しなければならないなら、
「いっそ距離を置いて人と接した方がいい」
と思う人だって
当然いらっしゃることでしょう。

人間にとって最も大きなストレス源は、人間だからです。


ふたつの心 ・ ふたつの気持ちの間で
わたしたちは揺れ動いていることがあります。

そして、それを忘れがちです、というよりも
自身では自覚できてずにいること、
意識せずにいることも
とても多いからです。

自覚できず、意識せずにいることによって、
それが二つの心の葛藤となって
からだの症状として現われることさえあります。


誤った知識によって
誤解されていることがありますが、
ふたつの気持ちや心が
葛藤となって身体の症状に現れるのではありません。

それを自覚したり意識できずにいる中で、
葛藤が深くなってゆくのです。
 

  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

カウンセリングにいらっしゃった方が
たとえば

「 わたしには●●●のところがあって、
 どうしてそうなんだろうって自分で悩んできた。
 そうしたところを変えていきたい、
 どうにかしたい 」

そんな訴えをされたとします。

そんな時、もしかすると人生相談などでは、
( ときにはカウンセリングでも )
「 では、そうなる為に、こうしてみましょう 」
「 こうやってみましょう 」のような単純な対応に
なってしまうかもしれません。


しかし、人の心や内面は複雑系の世界です。

お話や訴えを大切にお聴きしながら、
まずは、ご一緒に整理し理解してゆくことを
大切にしていきたいと思っています。


そうした中で、時折ですが
「 もしかすると自分は、そうしたい(なりたい)とは
 思っていないのかもしれないですね 」
「 わたしは、本当に治り(直り)たいと
 思っているのかなあ 」

そんなふうに、ご自分自身のもうひとつの気持ちに
気づいていかれる方が、いらっしゃいます。

実はここから、本当の意味での大切な一歩が
始まるのかも知れません。


たとえば、あるご相談者の方が
こんなふうに語ってくださったことがあります
振り返ったとき、自分は本当に良くなりたい、
 立ち直りたいと思っているのかと考えた時に、
 良くなってしまうのがこわい、っていう気持ちがあって、
 やっぱり心の底ではこのままでいたいと、
 思っているんだと思います


もちろん、この方は
元気になってカウンセリングを終了されました。

このように、ご自分のもうひとつの気持ちを
ご自分で語れるようになるということは、
心の成熟を、必要とすることでもあるからです。

遠回りのように見えるかもしれません。
でも、遠回りに思えて結局は一番の近道、ということは
案外多いものです。


「(心理的な意味での)遠回り 」が
できる人か、あるいはできる状態か、そうでないか、
ということは、
カウンセリングに限らず、対人援助の場合には
成否を左右するような、
とても大切な事柄になります。

ですので、時には、面談を重ねながら
「 心の余裕 」を
少しずつ積み重ねてゆくことが
大切になってくるケースだってあります。


まずご一緒に整理しながら、ありのままに理解してゆく。
カウンセリングとは
それが出来る場でありたい、と
思っています。

 

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