抑うつ - 抑うつ状態 〜 あなただけの物語り 〜


抑うつ( よくうつ )とは、
病名ではなく、症状や状態をあらわす言葉です。

いろいろな症状が寄り集まったものですので、

正しくは「 抑うつ症候群 」と呼ぶべきですが、
ただ「 抑うつ 」とだけ呼ばれています。


抑うつ( 抑うつ症候群 )は、大きく分けると
抑うつ気分 」と
抑うつ状態 」とに分けられます。


抑うつは、たとえ軽度であっても、
独特の心身の苦しさが、ともないます。

それを「 うつ圧 」と呼んでいます。

気体には気圧、水には水圧、があるように
「 うつ圧 」というものが
心身を重く、苦しくしてゆきます。

ただやる気が起きない、ただ元気がない、
というだけのものでは、ありません。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
気分が上向かない
   ひどく気分が落ち込んでしまう
       気分の浮き沈みがはげしい


このような状態や訴えで
カウンセリングにいらして下さる方たちも
いらっしゃいます。


カウンセリングは、薬を用いずに、
お話をしてゆくことを通して

気分や神経を楽にしていったり、
心身の緊張をといて、気持ちを整理していく、
ということを
とても大切にしているものです。

抑うつであっても、なくても、
苦しい気分になっていたり、それが続くようだったり、
つらい心身の状態にあるようでしたら、

ひとりで耐えるばかりでなく、
心と気持ちを少しずつ整理する場を持ってみることは
とても大切かもしれません。

あなたが、少しずつ
楽になってゆくことが大切です。
 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
抑うつ気分

たとえば、
いつまでも降り続くシトシト雨のように
思い悩むことが続いたり。

あるいは
いくらやっても理解されない、報われない中で
心と身体の無理を重ねてくると ・ ・ ・ ・

誰もが、苦しくなって、気分が沈むようになります。
憂うつにもなるでしょう。

やる気や意欲も湧いてこなくて、
自分で無理矢理、身体を動かしている、ような気分に
なってゆくかも知れません。

不機嫌になったり、
ひどくイライラすることもあるでしょう。


あるいは
これまで仕事で能力を発揮し、会社や周囲からも認められ
評価されてきた自負を持つ人が
環境が変わったり、立場が変化することで
やり甲斐を失ったとき、
気力が失われていくケースは、多いものです。


これらの状態は、抑うつというだけでなく、
いろいろな身体症状を
引き起すことにもなります。

周囲の物や人が( 時には自分自身の存在すら )、
遠くにしか感じられない。実感がわかない、
という感覚になるときも、あるかもしれません。

物事をひどく悲観的にとらえるようになったり、
不意に涙が出てくるようなことも
あるものです。


こうした気分状態を「 抑うつ気分 」といいます。

「 死ねたらどんなに楽だろう 」などと
思ってしまうことだって、あるかもしれません。


ひとくちに「 抑うつ気分 」と云っても、
たとえば、軽度で一過性の状態もあれば、
慢性的な抑うつ気分をむかしからずっと抱えてきた、
という方もいらっしゃいます。
 

抑うつ気分の初期や軽度なときには、
こうした苦痛な気分状態から抜け出そうとして、

むしろ、気の紛れることに没頭したり、
逆に仕事に打ち込もうとしてみたり、
ということもあります。

季節の変わり目になると、
決って、軽い抑うつ気分を経験する人もいます。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
抑うつ状態

一方の「 抑うつ状態 」とは、

抑うつ気分というだけでなく、
そうした気分や気持ちの範囲を越えて

思考や意欲という精神機能までも低下する状態を云います。


「 抑うつ気分 」という状態では、
そうした気分を抱えて
しんどくなったり、苦しい気分になってはいても、

生活や仕事など外面的には
一応は、なんとか普通にやれている状態です。

・ ・ ・ うつ気分はあっても、好きなことには熱中できるとか、友人と楽しく遊べるというのは、うつ状態ではない ・ ・ ・ 原田憲一


しかし、そこに「 抑うつ状態 」が加わってきたり、
「 抑うつ状態 」になってくると、
思考や意欲という精神機能が低下することによって、

家事や仕事の日常生活、あるいは人間関係などで、
具体的に支障や困難が、生まれてくるようになります。


頭に霧(きり)や靄(もや)がかかったみたいで、
思うように考えられない、集中できない。

文字を読んでも頭に入ってこない。

という症状や苦痛を訴える方は、多くいらっしゃいます。


物事への関心や興味を失っていったり、
好きだったものへの関心や興味も
なくなっていき、
ひどく億劫になり、苦痛になってゆきます。

むしろ頭では「 やろう 」「 やらなきゃ 」と
焦っているのに、
手につかず、身体が動かず、
これ迄の自分のようには、やれなくなっていきます。


そのため、「 抑うつ状態 」になっていくにつれて、
なによりもご自分自身が
そうした心身の変調に苦しみ、焦燥感におそわれます。

「 自分はどうしてしまったんだろう 」と
不安になって、
なんとかしよう、どうにかしなきゃ、ともがきますが、
ただ頭の中で空回りしがちです。


それでも、
自分はまだできる、まだやれる、と
思えているときは、それを支えに踏ん張れますが、

何かのきっかけで
もう自分には「 出来ない、やれない 」と感じたとき、
心身の破綻が、
いっぺんに訪れるようなことが起きてきます。

それは、ことばを換えると
最後の一滴までもしぼり尽くしてしまった、と
云えるかもしれません。


仕事や職場などで、
自分なりに懸命にやっているところに
( この時点で、実際には精神的綱渡り状態です )、

上司から「 給料泥棒! 」などの
叱咤激励を浴びせられて、それをきっかけに
深い抑うつに落ち込んでいくケースなども
あったりします。

こうした事は、なにも職場だけではありません。
家庭内にも、似たようなことがあります。
 

抑うつ( 抑うつ症候群 )が取り上げられる時には
勤労者のメンタルヘルス問題として
扱われることが多いのですが、
実は、家庭の主婦のひとたちが
抑うつ感で苦しんでいるケースが多くあります。

年齢も、三十代から六十代の方まで、さまざまです。

ご相談者によっても、もちろん違いは在りますが、
二・三度カウンセリングで
お話をしてゆく中で、
落ち着いていかれることが、多いように思います。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

ご自分自身でも気づかぬままに、
結果的に、心身の負担を積み重ねている、という場合は
けっして少なくありません。

しかも、それが「生き方」のようになっている場合すら
よく見られるものです。

>>> 心のパターンについて
 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
あなただけの物語りを大切にする

 

抑うつ気分を繰り返したり、
抑うつ状態を繰り返す方もいらっしゃいます。

「 何かのきっかけが有るわけじゃないし、
 どうしてそうなってしまうのか、
 自分でも理由が分からない 」
そうおっしゃる方は、多いものです。

そこには
お一人おひとり、さまざまな理由や経緯(いきさつ)
あなただけの物語り、
というものがあるものです。


どんなものが、どんなことが、
どのような葛藤や苦痛 ・ 心の負担をもたらすか、
人が違えば、みんな違うものです。

「 心のひだ 」という言葉があるように、
わたしたちの心と身体は
とても繊細な糸によって、つながっているものです。

カウンセリングでご一緒に整理をしていく中で、
少しずつ見えてくることがあります。
 

「 症状 」を改善することは大切ですが、
症状とは、しょせん影のようなものに過ぎません。

一度、ご自分自身の荷下ろしをしてみることも
とても大切なことかもしれません。

カウンセリングはそういう場でもあります。
 


・ ・ ・ 治療とは、治すことです。治すとは、医者に来なくてもいいような状態へ導くことです。抗うつ剤(薬剤)を出したら、これこれの症状が薄れた。しかし、その時もその後も薬は飲んでいるまんま。そんなのは治すとは云いません。
「抗うつ薬は松葉杖ですから、それで改善しても偽りの回復ですよ」と僕は患者さんに伝えています ・ ・ ・
神田橋條治

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


安永浩氏は、こう注意を促しています
 
・ ・ ・ 今まで抑うつ的な人が、急にとってつけたような明るさを示し、周囲を安心させようとする、という場合には、更にさし迫った危険を意味することがある。死を覚悟することによって、実際に心が明るくなる、という逆説的な現象も存在するからである。
 本来のうつ病において、極期よりも、回復期の動揺期において、自殺の危険が大きいことはよく知られている ・ ・ ・
「神経症」1970年


いまから2・3年前( 平成20年頃 )に
「 うつ 」を扱ったテレビ番組をみていた時のことです。

その中で、自殺をされた男性のケースが
取り上げられていました。

40代の男性で
何年間か病院に通院して
投薬を受けていた、と云います。

それが、ある時
表情や様子が明るくなった時があった。
主治医も、男性の明るい様子を見て良くなってきたと云い、
奥さんもホッと安堵していた時に、
突然自殺を遂行した、というケースです。

「 自殺をするなんて、想像もしていませんでした。
 それまでずっと暗い表情をしていたのが、
 その頃、明るくなってきて、
 お医者さんも、良くなってきたと云っていたんです 」
奥さんが語っていました。

   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

どのような状態や症状であろうと、
ただ症状がなくなればいい、症状が消えればいい、
というものではないはずです。

ものごとには、「 よい回復の仕方 」と
そうでない回復の仕方が、存在しているからです。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
アルコールの問題 ・ 飲酒と抑うつ

 アルコールの力を借りて、抑うつ気分や抑うつ的状態を、乗り越えようとすることもみられます。
 アルコールも薬物ですので、インスタントの坑不安剤・安定剤のような形になるわけです。

 しかし残念ながら、効果は一時的で、酒量だけがあっという間に増えていき、場合によっては、短期感でアルコール依存症を呈する人も見られます。

 こうした意味で、過度の飲酒癖を持つ人のなかには、もともと抑うつ感情を内心に抱えていながら、飲酒によって、それが表面化(自覚化)されずにいる場合もある、と考えられるわけです。

 

・ ・ ・ ・ ・  抑うつ症状  ・ ・ ・ ・ ・

抑うつ(抑うつ症候群)とひと口に云っても、
一過性や軽度の抑うつ気分というものから、
自殺念慮を抱えるような深い抑うつ状態まで、
さまざまな程度があります。

 
 疲労感が抜けずに、なんだかいつも疲れた感じがする。

 気分が落ち込んだり、滅入ったりしてくる。
 なんとなく気力がわかない。意欲がわいてこない。
 だんだん億劫な感じがしてきて、やる気が起きてこない。

 ひとりになると憂うつな気分になってくる。
 
 今まで楽しんでやっていた事、楽しみにしていた趣味や活動なども、興味を失って、楽しくなくなる。そうすると、人と会うのも億劫になってくる。
 気分転換でなにかをしても、すこしも楽しめない。

 ひとりぼっちで取り残された気分に襲われる。
 人の輪の中にいても、ぽつんと自分だけ取り残されているようで、強い疎外感・孤独感・無力感に襲われる。それを取り繕うとして、明るく振る舞おうとするが、空回りにしかならない。

 周囲の物や人などが、遠くにしか感じられないときがある。
 
 人に会うのが億劫になって、人と会うことを避けがちになっていく。
 親しい友人に会うのも面倒になってくる。
 外出しようとして用意しても玄関からなかなか出られない。

 新聞や雑誌、本などを読んでいても、文字が頭にはいってこない。
 集中力が続かない。考えが進まずに、焦れば焦るほど考えがまとまらないことが多くなる。頭が働かない感覚になる。
 頭に靄(もや)や霧(きり)がかかったような感じがする。

 忘れっぽくなる、記憶力が減退したのではと不安を感じてくる。

 なにかやろうとする時には、意識的に気力を奮い立たせなくてはならない。

 涙もろくなってきたのか、不意に涙が出てきたりする。物悲しさ・悲哀感に襲われる。
 生きていても希望が持てない気分になる。生きている張り合いを感じられない。  

 普段ならなんでもなく決めていたような事も、決められなくなってくる。AにしようかBの方がいいか、それともどうしたらいいか、堂々めぐりを繰り返し、決められない。

 今迄はなんでもなくやっていた事にも、戸惑いや緊張を感じて、自然にやれなくなっていく。たとえば、人前でなにかをやろうとする時に、これまでなかったような動悸がしてきたり、緊張感に襲われたりするようになる。
 あるいは、緊張するような状況、ストレスがかかる場になると、ひどく動悸がしてきたり、胸の辺りが苦しくなったり、手が震えてきたり、してくる。気持ちも動揺しがちになる。

 そうした状態に強い焦りと危機感を感じて、なんとかしようとするが、ただ焦るばかりで意欲は空回していく。

 アルコールの力を借りて、なんとかこの気分や状態から脱出しようとするが、酒量だけがどんどん増えていく。人によっては、短期間のうちにアルコール依存症になっていく。

「自分はダメな人間だ」「何もできず、(家族・会社などに)迷惑ばかりかけて申し訳ない」「自分は足手まといの存在だ」「もう会社を辞めるしかない」「自分がちゃんとしていなかったからこうなった」 等々・ ・ ・ 過度な悲観観念に陥り、自分を責める気分や後悔の念を深めていく。
 
抑うつ症状とは、さまざまな症状の集まりですので、
身体の不調感(身体症状)も付きものです。

頭痛・頭の重さ・肩凝り・めまい・胃痛・胃の重さ
下痢や便秘・手足のしびれ感・心悸亢進・胸苦しさ その他

心理・精神症状に代って、
身体症状が一番前に現われる人もいます。

身体症状や身体の不調感が
自覚症状の前面にあらわれるケースでは、
身体の不調と考えて、内科や婦人科等を受診することも多く、
多くは心気症に似た訴えのために、
そこで安定剤や抗うつ剤などを
処方されているケースがたくさんあります。

そうした一般科で処方される精神薬によって
さまざま副作用や問題も生じています。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 

抑うつを呈する身体病もたくさんあります。

神田橋條治氏は著書の中で、
他の病院でうつ病と診断をされて治療を受けていたという
初診の患者さんに、
「うつ病は脳の目覚めがよくないので、
 朝、新聞を読んでも頭に入らないですよね」
と訊いてみると、
「どうもそうらしいですねえ。
 わたしは新聞を取りに行くのは億劫なんですが
 読むのはスラスラ入ってくるんですよねえ」
と答えるのを聞いたことがきっかけで、
内臓の病気を発見したことが、書いてあります。

慢性膵炎による気力の低下だった、ということです。

 

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