カウンセリングの始まり


カウンセリングを続けていくうちに、
こんな思いや気持ちが、そっと隠れるようにして、
訪れてくる時期があるかも知れません。

それは、たとえば、
被っていた厚い霧が晴れてきて、
気持ちが少しずつ軽くなってくる頃、だったり。

あるいは、ご自分の内側に、
これまでとは違う何かが、芽生え始めてくるようだったり、

そうした時に、
このまま進みたいような、でも進みたくないような。
そんな自分の気持ちに、
気がつく時があるかも知れません。

やっぱり、いまのままの自分でいたいような、
良くなるのが不安なような ・ ・ ・ ・

そんな気持ちになることがあるかも知れません。

どっちが本当の自分なのか、分からなくなっている。
 こうして考えていくことできっと楽になれる、
 変れるきっかけになる、そう思う自分もいれば、
 次の日には、なんだか前に進みたくない気持ちになったりして、
 行ったり来たりしている自分がいます

本当に良くなりたい、立ち直りたいと思っているのか、
 そう考えた時に、やっぱり心の底では
 今のままでいたいと、思っているような気がします

長い間悩んでいたものが、
 ここで解決してしまったり良くなってしまったら、
 今までの人生が、すべてムダだったような、
 そんな気持ちになってしまいそうでイヤなんです

これ以上よくなりたくない

たとえですけど、自分の中で今まで築いてきたものを、
 少しだけ壊しては、違うものを作ろうとするけれど、
 また同じものを作ってしまって壊す ・ ・ ・ ・
 というのを続けている感じに、近いかもしれません

楽になるっていうことが、
 こうあるべき、こうありたいっていう自分の理想を
 あきらめること、投げちゃうことではないかと思えてしまう。
 そうすると、すごくむなしくなってしまうんです

これまでと違う対応をすると、
 なんだか自分じゃなくなったような感じがする時があって、
 でも、また以前と同じ対応をしてしまう時もあって、
 これでいいような、悪いような。
 うまく言えないんですけど、迷っているような
 スッキリしているような、正反対の感覚を感じています

●●● のところがなくなってしまったら、
 私らしさがなくなってしまう気がするんです。
 そう思うとすごく悲しくなるんです


これらの言葉は、実際にご相談される方たちが
カウンセリングの中で、
わたしに語ってくださった言葉たちです。

こうした時期、こうした気持ちは、
次に来る夏の季節のために木の芽が芽吹くように、
とても自然で、とても大切なものなのです。

そして、むしろこの時期にこそ、
あなたにとっての大切な何かが、育まれている時です。

卵を抱いている鳥は、じっと動かなくなるものです。


こうした気持ちを語った方たちは、
それっきりカウンセリングをやめてしまったかというと、
そうではありません。

むしろ、その反対です。

こうした気持ちを、
カウンセリングの場でお話される方、
こうした気持ちを、打ち明けてくださる方ほど、
良い方向へ歩んで行かれることが、多い気がします。

それは、たとえて云えば、
厚い雲に隠れていた時には気がつかずにいた、もうひとつの
ご自分の気持ち、と云えるかもしれません。

だとしたら、それは、
厚い雲や霧が晴れてきたからこそ
改めて気づけたもの、ではないでしょうか。

そう考えてみると、
こうしたもうひとつのご自分の気持ちに気づけるようになる、
そして、
それを面談の中で話せるようになる、ということは
なによりも、大切な一歩の証(あかし)なのかも知れません。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

建物を建てるときに、いきなり地面の上に建てたりせずに、
まず土台作りから始めるものです。

土台なしの建物は、外見がどんなに豪華で立派であっても
すぐに崩れ、傾いてしまいます。

カウンセリングの中で、自分自身の気持ちを知ってゆく、
理解してあげられるようになってゆくことが、
その土台づくりの一つなのかも知れません。

 

 

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